TRPG論前文
※便宜上の用語解説
アナログRPG=TRPGのこと。
デジタルRPG=主に一人用のオフラインTVゲームRPGのこと。
ネットRPG=MMORPGを主とするオンライン系RPGのこと。
それは1996年、夏ごろのことだった。
購読していたある雑誌に、こんな名前の特集が組まれていた。
「いまさら聞けない。ウィンドウズ95ってどうスゴイの??」
インターネット・インストールの概念・CPU云々…
今では馴染みになった用語の解説から、その性能まで。
ほとんど大学のパソコン室にもいかない分際で暗号のような活字に目を走らせるヲレは。
写真付きの記事の一文に凍りついた。
今思い起こせばそれは『ウルティマオンライン』の画面であったと思う。
シンプルかつバタ臭い色使いのデジタル(TVゲーム)RPGの画面。
チャットやらHP作って悦に入るのが関の山とタカをくくっていたヲレは、インターネットが提供する、
その『多人数参加のTVゲームRPG 』をTRPG的には心底「怖い」と感じた。
TVゲームは日々バカみたいに進化していた。
SS・PSでCD-ROMが主流となり、
(テンポは悪くなったが)獲得した大容量で大企業系RPGは戦闘・キャラクター・育成・グラフィックをその資本力でガンガン質を上げていた。
デジタル(TVゲーム)RPGは、ハードの勝利の鍵とまで言われるほどのジャンル的な地位の絶頂にあった。
対してTRPGのようなアナログRPGはどうだったか。
個々の人間の言葉と想像力に頼り、ルールを覚え、サイコロを振り…。
テンポは悪く、しかも(当時は)複数人間が同じ場所・時間に集い、膨大なルールを理解する必要がある等、前提条件が数多くあった。
92~93年、ヲレはTRPGのオリジナルルール作りに腐心していたわけだが、こういった弱点「テンポの悪さ」解消するためだった。
事実、テンポの悪かったルール「ガープス」は大半のメンバーに嫌われて除外。
戦闘時のルール回しがまどろこっしい「ソードワールド(1st)」のシナリオからは戦闘が消えてゆく。
スピーディで視覚・聴覚に訴えかける演出、長時間にわたる娯楽。そして達成感…
デジタルRPGの良さはTRPGに出会う前から。
そして出会った後も、ヲレは認めていた。
アナログRPGの良さもやはり認めていて、デジタルRPGでは実現が難しい点。
特に「みんなとのコミュニケーション・物語の共有性」を重視。
いや、むしろソレばかりを追求していた。
アナログRPGに横たわる多くの前提・テンポの悪さも、コレのために帳消し。
おつりが来る報酬。
それは大きなモチベーションであり、グループ内で色々なトラブルがあっても続けられる理由だった。
ところが、ネットRPGは面倒な前提を取り払った。
デジタルRPGのテンポ・アナログRPGのコミュニケーション…。
同じ時間・同じ場所にいなくても参加できる気軽な共通世界…。
アナログRPGでも当時、ルール行使に楽しさを見出していた連中がカードゲームに流出。
出版会社もルールを作る制作組織も、金になるカードゲームに傾倒してアナログRPGのルールがほとんど出ない…。
96年、アナログRPGは80年代後半~90年代初頭の勢いを失い、ネットRPGを待たずしてその退潮が明らかだった。
そこにデジタル・アナログ両RPGの利点を併せ持つRPGの登場…。
アナログRPGは生き残る領域が無くなるのが。
そしてグループのメンバー達が、ネットRPGを理由に消えてゆく。。。
そんな予感がヲレの心を凍らせた。
その当時、グループではヲレがGMで6つ目のキャンペーン(連続したセッション)を遊んでいた。
前年に起こった内部トラブルが原因で、低調なモチベーション・惰性で集まる面子・ルール(SW1st)に対する飽き…。
それらを解決するために、戦闘バランスを随分辛口にしたり話の内容も盛り上がった過去作に乗っかって力技で盛り上げようとしていた。
ネットRPGで衝撃をうけたものの、キャンペーンの自然消滅は=(イコール)グループの消滅と思っていたヲレ。
メンバーが自然消滅を嫌ってるのが大半だったし、ネットRPGを遊ぶ環境を周囲の誰も持っていなかった事もあって、とりあえずキャンペーンを続けてゆく。
続けてゆくうち、こう思った。
「話(物語)の質でこのアナログRPG続けられね??」
しかし、自分が素人ということを考えれば、いささか無理があると思った。
そんな芸当、出来るものならすでにやっているし、出来ないからここまで煮詰まっているのだと。
どうしよう…?
と自分の疑問に答えらえないまま、
キャンペーンを続けていったある日、面白いファンタジー系の夢を見た。
幸い、起きても内容を鮮明に覚えている。
すぐにペンを取った。
「この話を元に次回(7回目)のキャンペーンにするにゃー」
と。
しかし、上手くまとめられない。
全部覚えている。
なのに『アナログRPGのシナリオ』として書けない。
アナログRPGはマスターとプレイヤーの会話・思考のキャッチボールだ。
しかし、ヲレの見た夢はキャッチボール前提としては無理があった。
映画・小説・デジタルRPG(しかも日本式RPG)・アニメといった、作り手側からの一方的な提供物としては向いていた。
…つまり、活路として見出した「話(物語)の質」でも映像・活字作品に遠く及ばない。
そんな当然のことを悟ったヲレは、ペンを置いた。
そしてキャンペーン後半から、こういい始める。
「このキャンペーンシリーズ、今回のが
終わったらヲレはもう続きをやらないから」
メンバーはグループ瓦解も同義と知っていた思う。
しかし、メンバーの半分は黙ってた。
「今のグループの状態では無理も無い」
と思っていたかもしれない。
しかし、残った半分は黙っていなかった。
理由の説明を求められたヲレは正直に
「TVゲーム・ネット・映画の事を考えて、TRPGの限界を知った。特にネットRPGには敵わない」
その答えに納得いかないのか、次々と抗議を口にする半数のメンバー。
ヲレは考えを変える気はないと首を振りながら
『チミら、そういうことを真剣に考えた事無いでしょ??』
と内心毒づいた。
黙っていた残り半分のメンバーも、この論理を多分理解できてはいなかった。
と、思う。
(※この数年後に
黙っていたメンバーの一部が論敵に回ったことを考えると、
理解していなかったか、理解していたが忘れていたんだろう)
この時、ヲレは
「TRPGはネットと世間と自分たちの環境変化にいずれ潰される。その前に無駄に足掻かず、こっちから引導渡してやった」
そんな気分だった。
自動車・鉄道を目の当たりにした馬車の御者とかの状況に似てたのかも知れない。
その後発生する不毛な首領蜂や、人間関係の悪化・続きに続いたキャンペーンの惨たらしい末路を思えば、ここが間違いなくヲレにとっての『辞め時』だったと思う。
が。
ご存知の通り、 ぽ村 のアナログRPG人生はまだまだ続く。
復帰を希望され。
極端なまでに減った面子で。
色々な偶然と都合で、再び集まりだした面子で。
むしろそこからが長いくらいに。
そこで最初に「そんな面倒なの、TRPGじゃねぇ!!」と思った諸氏に聞きたい。
ooに勝てない。
ooより面白くない。
ooに…
と、ここで「面倒」と思った瞬間に捨てるのも正解の一つだろう。
(つーか捨てときゃよかった)
でも続ける事になった。
結果的には、その後10年間も。
たくさんの負けが確定している。
それでも続ける・そこで生き延びて行くにはどうすれば良い??
その活路を見出すべく、復帰したての ぽ村 はTRPG自体を解析しはじめた。
この先続く
「TRPG各論」各板と
最後の
「総論」
はそんな小難しい話をするところ。
そしてこの記事はここから後に続く「各論」「総論」といった題目自体に対する異議と修正と要望を書き込んでゆくスレッド だ 。
追記…皮肉な話なんだが、mmoRPGの威力を一番先に認識してた ぽ村 はその手のゲームにハマったことがない。
逆に上で ぽ村 に異議を唱えた・復帰を希望したメンバー達はmmoRPGやモンハンにハマって、TRPGを見限るきっかけになった。
その後、復帰した ぽ村 がどんな方法に活路を見出したかは最終回「TRPG総論」に続く。